(毎日新聞2007年5月1日)
 憲法の改正手続きを定める国民投票法が、憲法施行60年で初めて制定されようとしている。国の最高法規の変更に道を開く特別な法律で、公布後3年間は国民的論議を深めることも決められている。主権者として賛否を投じる私たちは、この新しい制度の何をどう考えればいいのだろうか。5月中旬とされる参院採決を控え、とりわけ大事な五つのポイントについて、それぞれの論点に詳しい人たちに、評価と考え方のヒントを聞いた。
 ◇成人年齢と切り離しを--NPO「ライツ」理事・小林庸平氏
 --法案で、国民投票の投票者年齢は18歳以上になりました。
 「評価したいと思います。憲法は国を規定し、自分たちがこれから生きるすべを決める大切なものです。だからこそ若い人たちが投票できる意味は大きい。最短で3年後に投票が行われるとすると、今の高校生も参加できます。今は学校で憲法を勉強する機会があまりないので、関心も高くないかもしれませんが、いざ自分たちも投票できるとなれば、学校で政治の議論も行われるだろうし、そうしていかなければならないと思います」
 --NPOで選挙権年齢の引き下げを訴えてきましたね。
 「私は創立間もない単位制の都立高校に通ったが、周りはほとんど年上で、働きながら通学する人もいた。その影響で社会のつながりや政治に興味を持ち、我々の世代は財政赤字や年金、環境といった大変な時代を迎えると知った。なぜこうなったのか考えると、若い世代が声を上げてこなかったからではないか、若者の政治参加を進めていかないとだめだと感じた。大学1年の時、学生や若者が選挙権年齢の引き下げを訴える『ライツ』を知り、入会しました。
 我々が調べたデータでは、186の国と地域のうち162で、18歳以下の年齢から選挙権が保障されています。日本は世界の流れに取り残されているんです」
 --法案には引き下げが明記される一方、成人年齢や選挙権年齢が引き下げられるまでは20歳以上とする経過措置が入りました。法が施行される3年後をめどに、公職選挙法や民法など関連法を見直すという規定も盛り込まれています。
 「字面だけ読むと、他の関連法が整わなければ投票者年齢も『20歳のままなんですよ』と読める。先日、自民党の法案立案者の一人、保岡興治元法相と話したら『20歳にとどめたいからではなく、成人年齢とセットにした方がいいからこうした』という説明でした。その言葉は信じたいけど、やはりちゃんと監視していかないといけない、これからも選挙権年齢の引き下げを働き掛けていく必要はあると感じます」
 --実際に投票年齢引き下げが実現するには関連法の整備が壁になるかもしれませんね。
 「法律にはそれぞれ立法目的があり、例えば民法や少年法では、それぞれの目的に必要な年齢を設定しています。『諸法令』というと未成年者飲酒禁止法、喫煙禁止法まで二十数本にもなると言われるけど、それぞれ立法目的は異なり、必ずしも一致させる必要はないはずです。欧州では諸法令の年齢引き下げも一様ではない。ドイツでは先に選挙権年齢を引き下げ、後で成人年齢を引き下げた。選挙権年齢は成人年齢と切り離して議論すべきだと思いますが、実現せず、残念です」
 --18歳で区切るのが最良でしょうか。
 「我々は16歳以上を主張しています。憲法は特に重いからこそ、国が最小限の教育を保障している義務教育を終えた若者が、しっかり判断する機会を作ることは必要だと思います。よく『若い人たちはどうせ選挙に行かないだろう』『判断もできないんだから下げても仕方ないだろう』と言われますが、選挙権はなるべく多くの人に保障するのが民主主義の価値でしょう」【聞き手・高山祐】
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 ■ことば
 ◇投票権者の年齢
 18歳以上。法が施行される3年後までに、選挙権年齢を定めた公選法や成人年齢を定めた民法など関連法の整備を検討するが、それらが変わるまでは3年が過ぎても20歳以上のままとなる。自民党には成人年齢引き下げへの異論も強い。
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 ■人物略歴
 こばやし・ようへい
 選挙権年齢引き下げと政治教育の充実を目指す特定非営利活動法人(NPO法人)「Rights」(ライツ)に18歳から参加。職業は民間シンクタンク研究員。25歳。

この記事の投稿者

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NPO法人Rightsは、「未来を長く生きる若者は未来の決定により大きな責任を」との思いから、選挙権・被選挙権年齢の引き下げと政治教育の充実を2つの柱に、2000年から若者の政治参加をめざし活動してきました。

現在は、政治教育や若者政策の提言、政治家への働きかけに加え、自治体における若者参画プログラムの拡充、学生・若者団体への支援・助言などの活動を行っています。