今回のフォーラムは、VOTEジャパン社長の、横江公美さんをお招きして、12月12日に国立青少年センターにおいて行われました。参加者は開始時間ちょっと前あたりからちらほら集まり始め、最終的には60名ほどになり、まずまずの盛況だったと思います。
「選挙の役割とは?」
 日本では、選挙というと「政治家を選ぶ」ということが目的になります。確かに当たり前のことですが、欧米ではちょっと違います。欧米の選挙には、「政治家を選ぶ」だけではなく、もうひとつ「選挙を通して教育をする」という目的もあるのです。
 選挙があるたびに、欧米の中学校、高校では、候補者の政策などを調べ、研究し、ディスカッションしたりします。そのために、選挙対策の生徒が選挙前から熱心に下調べしていたり、積極的に候補者の演説を聞きにいったりして、勉強しています。また、大学などでは、候補者を招き講演をしてもらうことで大学生の勉強を促したりすることに重点を置き、選挙時のために、専門のプロジェクトチームを発足させ政策を吟味し、研究したりして、選挙に備えています。大学は、こぞって候補者を招こうと躍起になっているのです。
 選挙をするときに、日本ではマスコミに出てきたもの(テレビ、新聞など)でしか候補者を見ていませんが、欧米では大学にいけば候補者の演説が聞け、候補者の政策を知りたければその地区の大学のホームページを見ればわかるというように、大学が選挙活動の中心的役割を担っているのです。
 また、欧米では候補者のスピーチ、講演などはすべて「Education」といいます。つまり、候補者が講演してまわることは、それが「啓蒙、教育して回っている」ということを意味しているということができます。欧米での選挙期間は、「教育、啓蒙期間」でもあるのです。
「大学の役割」
 前項でも言いましたが、欧米の大学は日本の大学に比べてきわめて選挙に熱心です。大学が、選挙を格好の勉強材料として取り上げ、学生が占拠に対して関心を持ち、研究することを奨励しているのです。具体的に言うと、過去30年にわたる法令、論文、事件記録、スピーチ記録などを全てデータベース化したものがあります。それだけでもすごいものがあるというのに、なんとそれを大学院にいると無料で使えてしまうのです。これは、月あたりの使用量が半端でなく高いらしいですが、大学院生には大いに使ってもらいたいということで、大学が全額負担しているのです。
 データを頼りに、過去の同じ人のデータを比較したりすることで何が求められているのかなどを詳しく分析したり、相手の盲点を突くこともできるようになります。また、そのようにして大学に残って研究していた人でないと、選挙の公約を作ったりするところには入れないのです。こうやって見ていると、2,30年後、欧米と日本の選挙の差、政策の差が、どうなってしまうのか、ちょっと不安です。
「将来の有権者のために」
 これは日本でも行われていることですが、選挙候補者は、子どもたちと一緒に移ることで、人気度はアップします。しかし、日本のようにただ人気を取るためにやるのではなく、前述したように、候補者が積極的に「教育」をするという観点から、候補者は学校によく赴くのです。小学校などを舞台に、その日は子どもたちのほか、親も参加し、候補者の政策、政治観についての授業を受けるのです。
 そのために、小学校側も、ただ待っているだけではありません。候補者を呼ぶために、手紙を送り、積極的にアプローチするのです。候補者の事務所には、毎日山ほどの手紙がくるそうで、その中に、子どもの手紙も2割くらいはあるそうです。子どもたちも、積極的に選挙にかかわろうとしているのです。
 また、それに対して政府も対応をしていないわけではありません。連邦のホームページでは、Kid’s Pageがあり、子供用にカスタマイズされてわかりやすく説明されているページが発達しています(なかには、FBIのページや、CIAのページといったものにもKid’sページがあるようで、個人的にかなり興味深い)。そのページは、調べれば情報はいつでも手に入るし、しかも知識がなくてもわかるように、知識が身に付くように設定されているのです。
 また、選挙を題材としたディベート大会というのも、頻繁に行われます。特に、候補者が学校にきているときなどは、皆張り切って、候補者もそれに参加するということも見受けられます。子どもたちは、プロのディベート士を間近に見て、ディベートやプレゼンテーションに必要な知識を体得するのです。
 このように、選挙を通して、子どもたちは「自分で考え、それを相手に伝えることができるようになる教育」を受けるのです。
 このように、選挙活動が、大人側、子ども側ともに有益であり、「教育」の一環となっているということが、日本と欧米との選挙のかかわり方についての大きな差なのです。日本ではまだ、教育と選挙が結び付けられて考えられていませんが、教育の中に選挙があるということを考えたら、やはり政治は日本に比べて計り知れないほど身近なものであるといえるでしょう。
会場からの質問(一問一答形式)
Q:高校生の活動は文部省通知で禁止されているがそれについてはどう思うか。
A:活動と教育は違うと思う。しかし、時代は変わってきているということをそろそろ気づくべきだとは思う。
Q:確かに選挙と教育が結びついているのはいいのだが、それが単なる人気取りになってしまったら危険だと思う。政治教育をするなら、教育理念などそういうものをするほうがよいのではないか。
A:確かにそうで、教育という見地からすれば選挙の時には常に子どもが見ているということを考えるべきである。
Q:教育の中立性、また、ディベートに使う材料は、何が適切であるのか。
A:教育の中立性は、ディベートでは侵害されないと思う。ただし、先生がどちらかに肩入れしてしまうということもありうることが心配。また、ディベートに使う材料については、どんなものでも常識的な判断の下でならばいいと思う。

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NPO法人Rightsは、「未来を長く生きる若者は未来の決定により大きな責任を」との思いから、選挙権・被選挙権年齢の引き下げと政治教育の充実を2つの柱に、2000年から若者の政治参加をめざし活動してきました。

現在は、政治教育や若者政策の提言、政治家への働きかけに加え、自治体における若者参画プログラムの拡充、学生・若者団体への支援・助言などの活動を行っています。