6月6日水曜日、ちょうどこの日は小雨が続いていた。私は期待に胸を膨らませながら国会へ向かった。阿久津幸彦衆議院議員(民主党)から彼の所属する委員会で選挙権年齢の引き下げに関して質問をするということであった。これまで党派を超え、国会議員に選挙権年齢引き下げの重要性を訴えるため、日々国会に足を運びつづけることで少しずつ理解を得てきた実感が一気に心に湧いてきた。
 彼の所属する委員会は「政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会(略称:倫選特)」で、主に選挙制度について議論するところである。16時6分、「本日は、現在の選挙権制度が抱えるさまざまな問題点について質問をさせていただきます。」厳粛とした中で阿久津議員の質問が始まった。阿久津議員の質問に答弁するのは片山虎之助総務大臣と遠藤和良副大臣であった。
 質問の要旨は①20歳とする選挙権年齢の根拠はなにか、選挙権年齢と成人年齢を一致する必要があるか、②総務省として世論調査をする意思があるか、③被選挙権年齢を25歳と30歳と定める根拠はなにかである。
 ①について遠藤副大臣は「それ(20歳)は公職選挙法で定められていて、民法上の年齢と必ずしも一致しなければならないということではない。ただ司法上、判断能力を前提とする民法上の成年と政治に参加して選挙権を行使できるだけの判断力を前提とする選挙権年齢とを異にするだけの理由がない。また成人年齢や選挙犯罪の観点からの刑事上など法律体系全般との整合性も考慮しなければならない。」と答弁した。それに対して阿久津議員は「刑法、少年法とかいろいろ関係法令はあるが、それとともに成人年齢は非常に重きを置いているのではないか、それを前提にした上で選挙権年齢を決めていると考えていいのか」と問いつめた。それに対して片山大臣は「…一人前は20歳以上とする昔ながらの、観念的にもそういう社会通念があり、そこに合わせたのだろうと思うし、それはそれでいいんではないか」と答弁した。続いて阿久津議員は「民法、少年法、関係法令等が18歳を成人とするなら、選挙権も引き下げる事は可能か」と迫ったが、片山大臣は「別に民法、刑法等と連動させようというわけではなく、また結果として両方の考えが一致して20歳になった。また政治に参加するには思慮分別があり、社会的な責任を果たせる人でなければいけない。一種のポピュリズムになる可能性もあるから慎重に検討すべきである」と述べ、引き下げに関して消極的な意見に留まった。それに対して阿久津議員は「50年前の内務事務官が述べたことと一緒だ」と指摘した。
 ②については18歳の若者たちは一種のポピュリズムに陥りやすいという大臣の見解に納得のいかない阿久津議員が「今、本当に10代、20代に熱心な若者がたくさんいる。ですから1971年から1978年にかけて行なわれた青年の政治意識調査をもう一度、総務省として行なってほしい」と要望した。それに対して遠藤副大臣は「調査の結果は16歳から19歳までの層も、20歳以上の層も選挙権年齢の引き下げには反対の人が多く、またそのころの意識とあまり変わってないので、それ以来、調査はしていない。」と答えたが、阿久津議員は「しかしその後、大きな国民意識の変化があったと考えている。政治参加を目指して出来たRightsが昨年の衆議院議員選挙の直前に全候補者1,124名を対象にアンケートを行なった。回答率は41.3%、464名だったと聞いているがこの中で18歳への引き下げに賛成だったのは93%です。こういったことも踏まえて、是非調査をやって頂きたい。」と食い下がった。これに対して片山大臣は「検討だけはしてみたい。またこの問題は各党会派で党として御議論いただくことが前提だ。」とようやく調査を行なう意思を見せた。
 ③については現在の被選挙権は25歳、30歳であるが、その根拠はなにか、成人に被選挙権を保障しなくてもよいのかという質問に対し遠藤副大臣は「選挙権と被選挙権の年齢に区別を設けているのは、社会的経験に基づく思慮と分別を期待しているもので、この年齢がそれぞれ適当であるとされている」と答弁した。
 今回、総務大臣、副大臣の答弁でよく分かったが、今の時代の若者は、選挙権を与えるのにふさわしい判断力や社会で責任のとれる判断力を備えていないという見方が相当強く感じられた。このことは重く受け止めなければならないが、そういった状況だからこそ、世代を超えて理解を求め合う場が必要なのではないか。Rightsとしては9月から始まる臨時国会で、選挙権年齢の引き下げを求める国会議員懇談会を設けて、そういった認識の違いを理解し合いながら選挙権年齢の引き下げの是非を真摯に訴えて行きたい。
 今こそ立ち上がる時がきた。意気揚揚と歩きながら小雨がやんで晴々とした夕暮れ時の空の下で後ろから背中をぽんと押してくれる風を感じた。

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NPO法人Rightsは、「未来を長く生きる若者は未来の決定により大きな責任を」との思いから、選挙権・被選挙権年齢の引き下げと政治教育の充実を2つの柱に、2000年から若者の政治参加をめざし活動してきました。


現在は、政治教育や若者政策の提言、政治家への働きかけに加え、自治体における若者参画プログラムの拡充、学生・若者団体への支援・助言などの活動を行っています。