毎日新聞2013年8月21日視点
◇選挙権と違いすぎては
憲法改正問題に絡み国民投票法が改めて注目されている。改憲の是非を問う国民投票ができる年齢を「18歳以上」で確定させるか、などの見直しが論点として浮上している。
そこで質問をひとつ。この国民投票、罪を犯し服役中の人は1票を投じられるか。
答えは「できる」。国民投票は年齢以外制限がないため、服役者のみならず死刑囚でも投票できる。刑事施設で不在者投票の方法が取られ、通常の選挙で禁錮以上の受刑者などが投票できないのとは大きく異なる。
このことは18歳投票権問題と実は無関係ではない。
国民投票法の制定時、選挙権と国民投票権の区別が議論された。その際、憲法改正の国民投票については「国のかたちを決め、国政選挙と異なり不定期で機会が少ない」などとしてできるだけ多くの国民の投票参加を認める理屈づけがなされた。
年齢については当時の民主党案に配慮して本則で「18歳以上」と規定した。だが、慎重論もあったため成人、選挙権年齢を18歳に引き下げるまでは経過措置として「20歳以上」とするよう付則で定められた。
今回起きているのは国民投票の実施に備え投票権は「18歳以上」で確定させる一方で、成人や選挙権年齢の18歳への引き下げは事実上先送りする動きのようだ。国民投票権を幅広く捉える理屈がまた、まかり通るのかもしれない。
だが、不定期だからといって国民投票権者の範囲だけを広げていいものだろうか。
国民投票の発議権が国会にある以上、国会議員を選ぶ選挙も改憲を左右する。しかも主要国の多くが採用している「18歳選挙権」の実現は若者の政治参加意識を高めるうえでも優先すべき課題だ。国民投票だけ切り離して先行させれば、この問題は当面、放置されかねない。
ちなみに選挙権と国民投票権者の範囲に日本のように違いを設けている国は少数派のようだ。私自身は選挙権が制限される人に国民投票を認めることにすら違和感を覚える。
結局「18歳成人、選挙権」を実現する際の膨大な法整備を疎んじる中央官庁の慎重論に配慮し、国民投票だけ18歳で「つまみぐい」しようというのが現在の議論の実態ではないか。付則を定めた時点で同時実施という方向で議論は決着している。要は政治の怠慢だろう。
ネット選挙運動の解禁に動いた安倍晋三首相の感覚には新しいものがある。ぜひ、国民投票権と選挙権セットで「18歳以上」を実現してほしい。
人羅格(論説委員)

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Rights 編集部
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NPO法人Rightsは、「未来を長く生きる若者は未来の決定により大きな責任を」との思いから、選挙権・被選挙権年齢の引き下げと政治教育の充実を2つの柱に、2000年から若者の政治参加をめざし活動してきました。
現在は、政治教育や若者政策の提言、政治家への働きかけに加え、自治体における若者参画プログラムの拡充、学生・若者団体への支援・助言などの活動を行っています。