-国会と内閣での18歳成人・選挙権検討再開を受けて-
2012年3月5日
特定非営利活動法人Rights
代表理事  菅 源太郎
 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。私たちの活動に対する日常からのご理解とご協力に心から感謝申し上げます。
 衆参両院の憲法審査会は2月下旬、日本国憲法の改正手続に関する法律(以下、国民投票法)に関係する18歳成人・選挙権について、内閣官房・総務省・法務省からの説明聴取と与野党議員による自由討議を行いました。2月24日には内閣官房「年齢条項の見直しに関する検討委員会」(以下、検討委員会)が関係法令の検討を再開しています。これらの議論では、公職選挙法を所管する総務省が成人・選挙権の同時引き下げを<資料1>、民法を所管する法務省が選挙権年齢の先行引き下げを主張しました<資料2>。
 私たちは、2007年の衆議院特別委員会で国民投票法案の投票権年齢について理事が意見陳述しました<資料3>。成立後は内閣官房・総務省・法務省・衆議院法制局や与野党国会議員と意見交換を重ね、2010年には福山哲郎官房副長官(当時)に法改正の早期実現を要望しています。
 私たちはこうした経緯を踏まえて下記の点を求めます。
1.選挙権年齢を定めた公職選挙法などの先行改正
 国民投票法が附則3条の「必要な法制上の措置を講ずる」ことなく2010年に施行されました。すでに2年近くつづく違法状態を解消する必要があります。とくに附則は18歳選挙権を明示しており<資料4>、国会答弁でも公選法改正が最低限の条件とされているのです<資料5>。ドイツでは、他の法体系の年齢と連動させることなく、選挙権年齢のみを18歳に引き下げた(1970年)のちに成人年齢を18歳に引き下げました(1974年)。私たちは、検討委員会が18歳選挙権の先行改正を決定し、公選法や地方自治法など選挙権年齢を定めた法律の改正案を今通常国会に提出するよう求めます。
2.公選法改正後の検討委員会の改組と工程表の策定
 公選法改正によって違法状態を解消した後、法務省が民法改正の条件に挙げる「国民の意識醸成」と「若年者の自立」<資料6>を判断する必要があります。私たちは、検討委員会を関係府省の政務三役と民間有識者(研究者・NPO)によるものに改組して、工程表を策定するよう求めます。
 私たちは、次期参議院選挙(2013年)の18歳選挙権実現をめざします。報道やネットを活用した世論喚起にご協力をお願いします。
<資料1>田口尚文(総務省自治行政局選挙部長)説明概要(2012年2月23日/衆議院憲法審査会)
 選挙権年齢の引下げについては、民法上の判断能力と参政権の判断能力とは一致すべきであること、諸外国においても成年年齢に合わせて18歳以上の国民に投票権・選挙権を与える例が多いこと等から、選挙権年齢と民法の成年年齢等は一致させることが適当であると考えられるところである。
<資料2>原優(法務省民事局長)説明概要(2012年2月23日/衆議院憲法審査会)
 公職選挙法の選挙年齢を引き下げるには、民法の成年年齢も引き下げなければならないとの議論があるが、これらはそれぞれ立法趣旨が異なり、理論的に見ても、諸外国の立法例を見ても、必ずしも一致させる必要がないと承知している。したがって、民法の成年年齢を引き下げずに公職選挙法の選挙年齢を引き下げることは可能と考えており、むしろ、公職選挙法の選挙年齢の引下げを先行させることによって、民法の成年年齢の引下げに向けた国民の意識を醸成した上で、国民の理解が得られた後に民法の成年年齢を引き下げることが、一つの有力な選択肢と考えている。
<資料3>小林庸平(Rights理事)意見陳述(2007年4月5日/衆議院憲法調査特別委員会公聴会)
 公職選挙法上の投票年齢<略>、それと国民投票法案の投票権年齢が一致することは望ましいかと存じます。しかし、<略>民法には民法の、少年法には少年法の立法目的がございます。それゆえ、私たちは、投票年齢と、民法、少年法といった他の法令の成人年齢が必ずしも一致する必要はないというふうに考えてございます。
<資料4>総務省(自治行政局選挙部)見解(2008年6月6日/Rights公開ヒアリング)
 国民投票法附則3条で「年齢満十八年以上満二十年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう…必要な措置を講ずる」と規定されている以上、すでに少なくとも選挙権年齢については引き下げる方向性が国権の最高機関たる国会の意思として法律に示されている。
<資料5>衆議院法制局見解(2010年2月26日/Rightsヒアリング)
 国民投票法の施行後に、国民投票法の投票年齢規定を改正しないで、公職選挙法の選挙権年齢規定のみを18歳に引き下げる改正は可能である。附則3条1項に「公職選挙法」と「民法」を挙げているのは例示とも判断できるが、立法者意思は二つを必須としている。ただ船田元議員は「強いて言えば公選法の規定を変えるということが最低限の条件になる」とも答弁している。
<資料6>民法の成年年齢の引下げについての最終報告書
(2009年7月29日/法制審議会民法成年年齢部会)
 現代の若年者は「大人」としての自覚に欠けているという指摘があり、民法の成年年齢を18歳に引き下げれば自然にこのような問題が克服されるとは考えられない。また、民法の成年年齢を引き下げると、消費者被害の拡大など様々な問題が生ずるおそれもある。したがって、民法の成年年齢の引下げの法整備を行うには,若年者の自立を促すような施策や消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する施策が実現されることが必要である。現在、関係府省庁においてこれらの施策の実現に向け、鋭意取組が進められているが、民法の成年年齢の引下げの法整備は、これらの施策の効果が十分に発揮され、それが国民の意識として現れた段階において、速やかに行うのが相当である。
<資料7>日本国憲法の改正手続に関する法律
(投票権)
第三条  日本国民で年齢満十八年以上の者は、国民投票の投票権を有する。
附則
(法制上の措置)
第三条  国は、この法律が施行されるまでの間に、年齢満十八年以上満二十年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう、選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法(明治二十九年法律第八十九号)その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする。
2  前項の法制上の措置が講ぜられ、年齢満十八年以上満二十年未満の者が国政選挙に参加すること等ができるまでの間、第三条、第二十二条第一項、第三十五条及び第三十六条第一項の規定の適用については、これらの規定中「満十八年以上」とあるのは、「満二十年以上」とする。

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NPO法人Rightsは、「未来を長く生きる若者は未来の決定により大きな責任を」との思いから、選挙権・被選挙権年齢の引き下げと政治教育の充実を2つの柱に、2000年から若者の政治参加をめざし活動してきました。


現在は、政治教育や若者政策の提言、政治家への働きかけに加え、自治体における若者参画プログラムの拡充、学生・若者団体への支援・助言などの活動を行っています。