2019年7月23日 NHKラジオ「Nらじ」にNPO法人Rights 代表理事の高橋亮平と理事の両角達平が出演しました。


収録音声の一部を文字起こししたので、共有いたします。聴き逃し配信は以下からどうぞ。

https://www4.nhk.or.jp/nradi/24/

むしろ問題にするべきなのは、48.8%であった全世代の投票率

(高橋)先月の参議院選挙における、18歳・19歳の投票率速報値が31.33%となったが、むしろ問題にするべきなのは、48.8%であった全世代の投票率ではないだろうか。これは日本の民主主義にとって危機的状況と言わざるを得ない。また年齢が上がっていくにつれて、投票率が高くなるというのは、世界共通の傾向である。ただそのような状況下でも、19歳の投票率が28.05%となっているのは、むしろ18歳34.68%と19歳と比較して6%高いということを考えると、中等教育などにおける成果とも言えるのではないか。むしろ意識がある若い有権者をどのように投票に向かわせるのか、単に投票率ではない参画をどう作るべきかを考えたい。

ー若者の投票率が低迷しているが、選挙への関心が低い状況であると認識しているか?

(高橋)政治や税に対する信頼が薄いというのが日本の特徴だろう。スウェーデン国民は税金が高いといいながらも、それに見合った政策が存在するという意識である。どの値段になろうが信頼があればよいということである。日本の若者や大人たちに政治や税に対する信頼度をアンケート調査したとしたら、もっと低い数値が出るだろう。投票率だけを考えるのではなく、参画の価値や自分ごと化できているかどうかを考えるべきだろう。例えばだが、北朝鮮は投票率が異常に高いが、これが民主主義のレベルと必ずしも一致するかというとそうではない。

(高橋)日本の子どもたちで、何か意見を発信したり、自分で行動したら成功しましたというような体験を持っている子どもが少なすぎるというのも課題である。例えば、何か提案したら身の回りのルールや環境が変わるということがあれば、意見発言をした方がメリットになる、ということであったり、代表者を出して選び方によって学校生活が変わるということであれば選挙は大切だ、ということになるが、そのような体験をしている人がほとんどいないという状況下で、学問として「選挙が大事なんだ」と伝えているだけで、本質的な意味を伝えていないところでは、若い人が関心を持つことはないだろう。

ヨーロッパでは民主主義や意見発信の仕組みが多世代・レベルで作られている

(高橋)前述した、自分ごと化の民主主義定着モデルとして生徒会があるが形骸化してしまっている。自分たちのルールが変えられることの選択肢を感じられない環境であるという点が重要である。ヨーロッパでは、小学生であっても自分たちの学校で次に購入する遊具を選択できたり、学校運営に関する最高議決機関として学校会議が設置されており、学校の先生や地域住民、生徒代表も含めて実施される。これは、個人が入るだけではなく生徒の意見を吸い上げて、生徒の意見を反映させる役割を持っている。民主主義や意見発信の仕組みが多世代・レベルで作られている点で、日本と他の先進国が決定的に違っている。ひとつ環境を作っていくきっかけとして、生徒会活動は役員だけではなく全校生徒が参加する形になる。参画すると自分たちの環境が良くも悪くも変化することを体感させる仕組みとして必要であると考える。

(高橋)日本若者協議会が若者政策について、各政党の政策に反映させようという取り組みが実施された。結果として、実際に公約に反映されたことがあり、実現するとその意識が持続している。また、千葉市では中学校55校の生徒会役員対象の研修を実施して、海外の生徒会活動事例を紹介すると今まで考えた経験がなかったが、彼らから新たな取り組みのアイディアが生まれたり、市長・教育長に対して提言や情報提供の場、学校の中で意思決定権を増やして欲しいということを言い出した。つまり、日本の子供が投票率が低いから考えていないであったり、ヨーロッパと比較して文化が醸成されていないため能力がないということは決してなく、チャンスさえあれば世界で有数レベルの参画をする若者参画環境が日本にはあると考える。

(高橋)ドイツでは、授業だけではなく日常の友人関係でも政治の話題が出たりする。また、Rightsで行なったスタディツアーでベルリン・パンコウ区を調査した際には、公園をリフォームする際に必ず地域の子供達を呼んで、どのような公園にしたいのかをヒアリングする。理由を尋ねると、公園で遊ぶのは子どもたちだから。というわけで、当事者の声を聞いてその通りに作っていく。日本のいまの公園は、むしろ子供を追い出して高齢者たちが遊ぶような形になっている現状を見ると、子供を参画するという意識は180度違う状況である。子供たちの価値観を大人たちで決めてしまってということだ。

プレーヤーになってもらうために被選挙権年齢の引き下げが必要

(高橋)1970年代にドイツ・スウェーデンは被選挙権年齢を引き下げた。最近のヨーロッパでは、選挙権年齢を18歳から16歳に引き下げようという動きになっている。18歳選挙権の実現は世界のスタンダードを目指してきたが、被選挙権の年齢を引き下げることで自分たちの仲間たちが立候補を始めた、プレーヤーになり始めたという意識を若者に持ってもらうためにも日本の被選挙権年齢の引き下げが必要である。若くして議員になる、大臣になるということは非常に重要で、歴代首相で一番若かったのは伊藤博文であるが、最初の人が一番若かったという点は当時の日本の意識としては象徴的である。

(高橋)ただし選挙権年齢の引き下げの時も同様の話題があったが、被選挙権年齢の引き下げだけを実施すればいいのではなく、制度整備・意識改革・教育レベルで当事者と思わせる参画の仕組みが必要である。大人も同様で、大人の投票率が高く、かつ親が投票に子供を連れていくと投票率が上がるという相関関係があるように、根本的な問題は大人の民主主義に対する意識が低いことであるのは言うまでもない。それに理解をしながら、次の世代にはこうならないために、子供たちには自治意識・自主自立を芽生えられる環境整備が求められている。これは、選挙に行く価値、政治家に任せるだけではなく、当事者で発言して参画しないとないといけない。それは職場・コミュニティでも作らせるような環境整備が重要。

主権者教育の欠如は民主主義の危機をもたらす

(両角)先月の参議院選挙における全体投票率は48.8%となったが、これはG20の中で最も低い投票率である。日本は昔から投票率が低いと言われているが、一向に変わっていない状況が続いている。昨年、スウェーデンでの選挙を現地取材したが、投票率は87%であったが、若い世代の投票率も84.9%であり、その差は約2%である。日本では、全体投票率が31.33%、10代の投票率が48.8%であり、その差は17%となりそれは非常に大きい。そもそも日本にいる人の半数以上が投票していないということも大きな問題であるが、若い世代とそれ以外の世代で投票率が大きな差があることは考えなければならない。ある研究によると、若年層への主権者教育や市民教育を怠っていくと、考え方が偏り、極端な考え方となり政治参加しない、不審度が増す、投票率が下がるということが続き、悪化することとなる。

(両角)スウェーデンでは投票率が8割を超えるが、自分が参画すれば社会が変わるという意識が醸成されている。実際のところ、日本の内閣府が若者世代を対象とした調査を実施したが「自分の参加によって社会を変えられると思う」と回答した若者の割合はスウェーデンよりも高い結果が出ている。また、スウェーデンでの選挙の位置付けは、最も参加度が低いと捉えられている。つまり、普段からの政治参加が重要であって投票が一番下となり、上の段階では「政党青年部に所属する」「若者団体を立ち上げる」「政治家とコンタクトを取る」「政策提言をする」などが挙げられている。考えてみれば、これら列挙したものの影響力が高いのは明らかであるが、投票はされど投票であり、あたりまえという意識である。

「若者の社会への影響力を高めること」を若者政策の目標に

(両角)投票がしやすい選挙制度が敷かれている他、期日前投票の後に投票日までは投票先を変えることができる「後悔投票」という制度も取られている。実際に政治への意見としては、例えば政党青年部に所属している若者が5%程度いるが、13〜29歳であれば誰でも所属することができるが、そこで若者向けの政策を作った上で、政党本部とブラッシュアップしていく中で、若者にも優しい政策も含めた上で政党の政策となるようになっている。それ以外にも、学校・若者団体が多くあり、自分の声を聞いてもらえる、合意形成を行い、まちづくりに参画して、街が変わっていくということが実際に起きている。自分が参加したことによってまちが変わっていると感じる若者が5割近くいる。参画したことによって、実際に声が届き社会を作っている、主体になれているということが大きい。国政・地方選挙の被選挙権・選挙権年齢はすべて18歳に設定されており、かつて出馬していた例もある。

(両角)スウェーデンの若者政策で一番大切にされていることは「若者の声を聞くこと」ではなくて「若者の社会への影響力を高めること」である。声を聞くことは、誰でもできることであり、聞いているフリをすることもできる。聞いたこと、声を発したことが社会が変わっていくことが影響力を高めること。参加という行動ではなく、その結果の方を見ている。日本の若者政策の目標も、影響力を高めることにしなくてはならない、投票の結果でなにか変わっていくことが影響力を高めることだが、それは難しいので、若い人に政治家になってもらい、政策をつくってもらう、国を引っ張ってもらうという考え方をしている。以上のことからも日本における被選挙権年齢の引き下げについては、大いに意義があると思う。


文字起こし担当:荒井 翔平(理事)

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NPO法人Rightsは、「未来を長く生きる若者は未来の決定により大きな責任を」との思いから、選挙権・被選挙権年齢の引き下げと政治教育の充実を2つの柱に、2000年から若者の政治参加をめざし活動してきました。

現在は、政治教育や若者政策の提言、政治家への働きかけに加え、自治体における若者参画プログラムの拡充、学生・若者団体への支援・助言などの活動を行っています。