本シリーズは、NPO法人Rightsを代表し、2017年にドイツ連邦外務省が実施した「ドイツの政治教育」に関する招聘視察に参加したメンバーの土肥がその記録をまとめたものです。

ドイツは独裁政権の経験を経て、民主主義体制を覆す自由を認めない「戦う民主主義」を国の理念としてきました。とりわけ世界的に先進的とされているのが「政治教育」です。また、学校内のみならず、学校外の多様な主体が政治教育に関わっており、多面的重層的実践がドイツ国内で展開しています。日本においても2015年に選挙権年齢を18歳以上に引き下げる公職選挙法の改正があり、子ども・若者の政治教育(主権者教育)が大きなテーマになっています。ドイツの長い実践は、日本にとって大きな示唆があると考えています。なお、NPO法人Rightsでは2014年にドイツスタディツアーを実施しており、その際にも「ドイツの子ども・若者参画のいま」という報告書を発行しています。

今回は、連邦若者協議会(DBJR)のヒアリングメモを紹介します。

 

先方:ルートヴィヒ・ヴァイゲル(若者政策担当)、アンネ・ベルクフェルト(U18担当)

連邦若者協議会(DBJR)について

連邦若者協議会は、若者育成団体の連合体である。協議会に加盟するためには、

1:自ら組織している
2:自発的・主体的である
3:自己決定によって団体の目的を定義している

の3つの原則がある。様々な若者育成に関わる団体は、自治体、州、連邦レベルで組織を持っているところもあれば、そうでないところもある。州の若者協議会は16存在している。連邦若者協議会に所属しているのは、600万人で600万人の若者を代弁する組織である。

ローカルレベルの若者協議会では事務局のスタッフは2,3人くらい、州レベルだと20人くらい、連邦で22~25人になっている。事務局がすべてを担っているわけではなく、理事会が意思決定を行なっている。若者協議会の理事会には若者が入っている。ただ割合に決まりはない。男女比はクオーター制を導入している。理事会のメンバーはボランティアである。とはいえ、様々な若者団体の有給スタッフが理事を勤めていることが多い。

どのようにして若者団体の意見を吸い上げているのか

 

古典的な意見の吸い上げ方は、年次大会における決定がある。すべての若者団体が招待されるため、年次大会における様々なテーマで意見をし、決定がなされる。そのあと若者協議会の理事会で重要事項を決め、文章にし、政治家や行政に伝えられる。またオンライン参加ツールも用いられて、理事会の議論に反映されている。年次大会におけるドラフトバージョンがあるわけでなく、個々の政策ごとに意思決定がされる。個々の政策ごとのドラフトをつくりたいと言った若者団体がつくり、それを踏まえて議論し、決定する。

ドイツの場合は若者協議会の意思決定に若者だけでなく、大人も参加する。一応、若者の方が多いことになっている。大人たちも若者団体の代表者として参加している。代弁しているのは大人であっても若者団体の代表として意見を反映していると考えても良い。若者の明確な定義はない、代表的なものは14~27歳。

選挙のシュミレーションプロジェクト「U18」とは?

U18は選挙のシュミレーションプロジェクト。運営母体になっているのは、ドイツ子ども支援協会、州ごとの若者協議会と一緒に実施している。家族省、連邦政治教育センターの助成を受けている。

欧州に存在する模擬選挙とU18は少し異なる。U18はトップダウンでつくられたものではなく、あるときベルリンのユースクラブに集まっている若者たち10人が自分たちが投票に行けなくて悔しい、模擬選挙を始めてしまえと1996年に始まった。そうしてはじまったプロジェクトが、模擬選挙としてではなく、政治教育のツールとして育ってきた。

ドイツで政治教育が大事になった背景

なぜ模擬選挙や政治教育が大事になってきたのかの背景を話したい。人口動態が変化し、有権者の多くが高齢者になっている。政治家は高齢者よりの政策になる。少子高齢化が進み、有権者の大部分が高齢者になっている。政治家の高齢化も進んでいるため、政治家は若者よりも高齢者向けのテーマを扱うことが多くなっている。

また、政治家や高齢層の人たちは、若者に対してネガティブなイメージを持っている人が多い。ネガティブなイメージというのは、若者というのは怠け者であって、政治に無関心で、真剣に議論したり、取り組んだりしていないというもの。私たちはこれは思い込みだと思っているし、仮にそうだとしたら、それは大人の責任だと考えている。高齢者向けの政治になっていて、若者に外方を向かれているのだと考えている。それはつまり大人の責任である。社会全体は若者たちをなめているようにも感じる。

例えば、大人たちの会話を聞くと、「最近の若者は…」というのはよく聞くし、「みんなスマホばかり見ている」「若者たちの将来の夢なんてどうせみんなYouTuberなんでしょ?」と言って、小馬鹿にしている。しかし、私たちはこれは現実ではないと知っている。実際に若者たちを見ると、高齢層よりも積極的に社会参加している人が多い。

都市化と過疎化の若者への影響

過疎化によって高齢化する地域ではユースクラブが閉鎖されたり、学校さえも閉校になっている。若者の居場所がなくなっている。そしてこれまでの政策を振り返ると、若者の本当の関心に向き合って来なかったと感じている。

学校では政治の科目もあるが、形式的な統治機構の仕組みなどドライな内容が多かった。

最近の政治教育の授業は徐々に現在の社会問題にあるスタイルのものも増えているが、まだまだだと考えている。若者がどうすれば社会を変えられるのか、参画できるのか、などを教える必要がある。ドイツの仕組みを理解し、どこをどうすれば変えられるのかを知らない。ドイツは仕組みが複雑なので、ただ仕組みを教えられるだけでは、ああめんどくさい、難しいと思うだけになってしまう。逆効果になってしまう。

そういう状況だからこそ、U18をはじめた。動物が好き、環境問題に興味がある、移民・難民の友達が国外送還されるかもしれない、など個人的な関心が政治的なテーマだと言うことを教えている。個人的なテーマに閉じこもっている子どもにアプローチすることで、個人のテーマを政治的なテーマとする。選挙前は良いタイミングで、メディアが若者の議論に関心を持つので、政治家も強い関心を示す。

U18に参加するのは非常に簡単。まず投票所登録をする。そのあと様々な資料をダウンロードする。資料というのは、各政党がどんな政策をしているかなどが書かれている。各政党の政策は表面的な言葉で書かれている。例えば、家族政策で「家族」と聞いてもどの政党も「大事です」と言う。そのなかでどれくらい重視しているのかはわからないし、その違いも見えにくい。各政党に様々な政策分野に関する質問を行い、事務局がつくった質問への回答をそのまま載せている。なかには難しい言葉での回答もあったが、おそらく各政党で努力をして回答してくれていると思う。AfDも質問を送ったが返答がなかった。ほかにもU18のプロモーション用の動画なども作り、SNSで拡散した。

2017年の模擬選挙は1649の投票所が設定され、投票した人は22万人に登る。このプロジェクトへの参加条件は、18歳未満というだけ。国籍の有無や、年齢制限もない。6~7歳が投票した例もある。投票用紙などのデータはpdfでダウンロードできるようになっている。開票はそれぞれの投票所を組織している若者が担う。最低三人いなければいけないことになっている。投票箱の仕様も決めていないので、若者たちが自分で考えてつくっている。例えば、クジラ型の投票箱もある。コンペもあったりする。

ユースクラブ、路面電車の中など、様々な場所で投票を行なっており、基本は学校外のプロジェクトとして実施されている。児童・若者が自分たちで登録をする。大人から紹介することもあるが、若者同士の口コミの方が多い。

U18の投票日(実際に選挙の9日前)の夜に集計をして、その場でオンラインで結果を公表する。インディペンデント系のスタジオにテレビ局が来て、取材してくれる。投票日は9日前とは言っているが、実際は9日前の1週間前から投票しても良いことになっいる。投票は18時終了で、19時からインターネットで随時結果を公表する。スタジオには、各党の青年部にはきてもらっているが、コメントなどはしてもらっていない。

なおU18の結果を見ると、AfDなどの極端な政党への投票率は低いので、大人の若者に対する認識は間違っているということがわかる。

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NPO法人Rightsは、「未来を長く生きる若者は未来の決定により大きな責任を」との思いから、選挙権・被選挙権年齢の引き下げと政治教育の充実を2つの柱に、2000年から若者の政治参加をめざし活動してきました。

現在は、政治教育や若者政策の提言、政治家への働きかけに加え、自治体における若者参画プログラムの拡充、学生・若者団体への支援・助言などの活動を行っています。