「成年18歳」是非諮問 国民的議論欠かせず
(産経新聞2008年2月14日)
 法制審議会に諮問された成人年齢引き下げの是非。民法で定められた「20歳」という成人年齢が引き下げられた場合、その影響は民法だけでなく、ほかの法律にも及ぶ可能性がある。このため、引き下げについては賛否が分かれており、議論が白熱しそうだ。(森本昌彦)
■発端
 民法の成人年齢引き下げは、昨年5月の国民投票法の成立に基づいて、議論が始まった。国民投票法は投票権者を「日本国民で満18歳以上のもの」と規程した。
 だが、今回の諮問には「若年者の精神的成熟度及び若年者の保護のあり方の観点から、民法の定める成人年齢を引き下げるべきか否か等についてご意見を承りたい」との内容で、国民投票法との言葉は登場しない。
 背景には、民法で定めた成人年齢を引き下げることは各方面に大きな影響を与えるため、国民的な議論が必要との考えがある。
 法務省幹部は「通常なら方向性を示して意見を聞くが、今回は色々な方面に影響が及ぶので、十分に審議してもらうため白紙の状態で諮問した」としており、法制審の結論はまったく予想できない状況だ。
■海外は
 英、仏、独、米の多くの州などが18歳を成人年齢としており、欧米では18歳が主流だ。選挙権についても、国会図書館で調査した189カ国・地域のうち166カ国・地域が18歳から選挙権を認めている。
 一方、明治29年に民法が制定されてから成人年齢は20歳のままの日本。実際に成人年齢が引き下げられた場合、どんな変化が出てくるのか。
 民法が成人年齢引き下げの方向で改正されると、結婚などに影響が出る。現在は男性が18歳、女性は16歳から結婚ができるが、未成年のため親の同意が必要。成人年齢が18歳以上に引き下げられると、女性は親の同意さえあれば未成年でも結婚できるが、男性は成人になるまで結婚できなくなり、男女平等の観点から論争が起こる可能性もある。
 養子縁組も現行は20歳からだが、これが引き下げられる。民法第5条で定められたローンなどの商取引ができる年齢も引き下がることになる。現行法では詐欺まがいの商法の被害に未成年が遭ったとしても、契約を取り消すことができる。年齢引き下げは、未熟な若年層の保護が薄くなる恐れもある。
■賛否両論
 今回の諮問は、未成年の飲酒や喫煙、馬券購入などを禁止する法律にも影響する可能性があるため、賛否が分かれている。
 早大大学院法務研究科の棚村政行教授(民法)は「成人年齢を18歳とするのは世界全体の流れ。日本だけが20歳にしておかなければいけない合理的な理由はない。法的に大人として扱うことで自覚を持たせる効果もあるのではないか」と指摘する。
 一方で、精神科医の斎藤環さんは「成人式での騒動が毎年問題になるなど、本人も世間も20歳を成人として扱わない現実がある。法的な成人年齢という建前部分を下げることにどれだけの意味があるのか」と引き下げに反対の立場だ。
 社会的にさまざまな意見があることを踏まえ、法制審で審議するメンバーも従来よりも幅広い層から選ぶ見込みで、議論は紆余(うよ)曲折が予想される。
成人年齢検討ヒアリングなど活用
(NHK2008年2月14日)
 民法を改正して、成人年齢を今の20歳から18歳に引き下げるべきかどうか検討に入った法制審議会では、国民の声を幅広く聞く必要があるとして、さまざまな分野の代表からヒアリングを行うほか、世論調査などを活用する見通しです。
 鳩山法務大臣は13日、民法を改正して、成人年齢を今の20歳から18歳に引き下げるべきかどうかを法制審議会に諮問しました。これを受けて、13日の審議会では「国民生活にも大きな影響を与える問題なので、国民の声を幅広く聞く必要がある」といった意見が出され、新たに設置する検討部会の委員に、法律の専門家だけでなく、現役の高校教師や社会学者などを選ぶことを決めました。検討部会は来月、初めての会合を開く予定で、成人年齢の引き下げが、契約や結婚など多くの分野に影響するため、経済界や労働界、消費者問題の専門家など、さまざまな分野の代表からヒアリングを行う方向で調整が進む見通しです。また、世論の動向を探るため、政府が行う世論調査の活用や、とりわけ成人年齢の引き下げの対象となる18歳や19歳の若者については、法制審議会が独自の意識調査を行えないかも検討される見通しです。法制審議会は、こうしたヒアリングや調査の結果も踏まえて、1年近くかけて慎重に検討を進めることにしています。

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NPO法人Rightsは、「未来を長く生きる若者は未来の決定により大きな責任を」との思いから、選挙権・被選挙権年齢の引き下げと政治教育の充実を2つの柱に、2000年から若者の政治参加をめざし活動してきました。


現在は、政治教育や若者政策の提言、政治家への働きかけに加え、自治体における若者参画プログラムの拡充、学生・若者団体への支援・助言などの活動を行っています。