国・都道府県で初!義務教育から「政治的教養」を育む

2017年3月29日、神奈川県教育委員会は「小・中学校における政治的教養を育む教育」指導資料を公表しました。
この指導資料は、神奈川県が2017年4月から県内の公立小学校・中学校に導入する「政治的教養を育む教育」について、教員が指導する際に参考にしていただくものです。2016年5月に県教育委員会に設置された「小・中学校における政治的教養を育む教育」検討会議で、約1年間をかけて議論を積み上げだけでなく、作業部会を中心に実践し検証も行った上で完成させました。これまでご紹介してきましたとおり、私(西野)は検討会議の座長を務め、指導資料の作成における全てのプロセスに関わらせていただきました。桐谷次郎教育長に完成した指導資料を手渡しさせていただきました(写真)。
選挙権年齢が満18歳以上に引き下げられたことを受けて、国や都道府県では「高校段階」に主権者教育を導入していますが、いずれも「小・中学校」という義務教育段階までには至っていません。そうした中、神奈川県として、「政治的教養」とは何か、どのようにして児童・生徒が段階的に「政治的教養」を身に付けていくのか、指導にあたって「政治的中立性」をどう確保するのか等を、具体的な授業例をもとに提示したという意味で、全国初の指導資料を作ったわけです。まさに、国や都道府県に先駆けた取り組みであり、主権者教育の新たな可能性を提示できればと考えています。

「政治的教養を育む教育」は模擬投票だけではない

指導資料は、神奈川県教育委員会のホームページで「概要」「全体」ともに掲載され、どなたでもお読みいただくことができるようにしました。

・指導資料の「概要」はコチラ
・指導資料の「全体」はコチラ

神奈川県では、「政治的教養」について、以下のように定義しました。

「政治的教養」
政治そのものの仕組みや政策について学ぶだけではなく、児童・生徒の発達の段階に応じて、自分の身の周りや住んでいるまち等の身近な問題から現実社会における社会的な諸問題まで、それらを自分のこととしてとらえ、話し合い、相手を尊重し、様々な意見を自分の中で考え合わせながら、合意形成のかたちを想定し、意思を決定するに至る過程を大切にして、社会参画につなげていくこと。

「政治的教養を育む教育」というと「模擬投票」を思い浮かべる人が多いかも知れません。たしかに、選挙に投票する過程やその意義について体験的に学ぶことも大切ですが、神奈川県では、単に「政治そのものの仕組みや政策について学ぶだけではなく」として、「自分の身の周りや住んでいるまち等の身近な問題から現実社会における社会的な諸問題まで」と広くとらえることとしました。

そして、「政治的教養を育む教育」を実践するうえで大切な3つのポイントとして、

①主に小学校の高学年や中学校で取り上げる現実社会における社会的な諸問題についても、様々な議論や解決の方策があることをふまえたうえで、児童・生徒が現状や事 実をしっかりと認識し、「よりよい社会」とは何かを自分なりに追究していくこと
②新たな知識、技能や学習方法を求めていくだけではなく、今まで各学校において積 み重ねてきた学習に、児童・生徒の発達の段階に応じて、学習していく過程の中で 「政治的教養を育む教育」の身に付けさせたい力の視点を加えていくこと
③小学校・中学校・高等学校の12年間を見通し、発達の段階に応じた指導を系統的に行っていくこと

を掲げています。このように、単に授業例を考えるだけではなく、指導の根幹をなす「政治的教養」をしっかりと定義した上で、小・中学校における指導の際にポイントを整理することを大切にしています。

政治的中立性の確保は「ポジティブ」に考える

また、「政治的教養を育む教育」を実践する際に、「政治的中立性」を確保するためのポイントも2つ提示しています。

①身の周りのできごとや現実の社会でおきている課題には様々な見方・考え方があることをふまえ、様々な見方・考え方を提示した指導を行いましょう
②多様な意見を引き出せるように、発問、資料、環境設定に配慮し、指導を行いましょう

現場の先生方が安心して「政治的教養を育む教育」に取り組むことができるように、ドイツの「ボイテルスバッハ・コンセンサス」など諸外国の事例も参考にしながら、先生方との徹底的な議論を経て、この2つのポイントを提示することになりました。特に、「政治的中立性」をネガティブにとらえないように、表現は「☓☓してはいけない」ではなく「〇〇しましょう」というポジティブなものにしたところも特徴です。この「政治的中立性の確保」も含めて、「指導資料」には全頁にわたって、「政治的教養を育む教育」を実践していく上で参考にしていただけるような工夫が凝らしてあります。

神奈川県内の先生方のみならず、全国各地の小・中学校の先生方にも活用していただければと願っています。
なお、2017年度は、この「指導資料」の内容をふまえた授業を実践協力校(神奈川県内4校)で実施するとともに、「政治的教養を育む教育」実践協力校連絡会を設置し、よりよい授業の展開に向けた協議等を行っていく予定です。
私自身も全力で取り組んだ「小・中学校における政治的教養を育む教育」検討会議から引き続き、この「指導資料」の充実に向けて、今後も神奈川県教育委員会にご協力していくつもりです。

※この記事は副代表理事である西野のブログ記事より転載させていただきました。

この記事の投稿者

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NPO法人Rightsは、「未来を長く生きる若者は未来の決定により大きな責任を」との思いから、選挙権・被選挙権年齢の引き下げと政治教育の充実を2つの柱に、2000年から若者の政治参加をめざし活動してきました。

現在は、政治教育や若者政策の提言、政治家への働きかけに加え、自治体における若者参画プログラムの拡充、学生・若者団体への支援・助言などの活動を行っています。